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細胞とコロイドColloid  *『資本論』の「膠状物Gallert」=英語のコロイド


      メンデレーエフ 『化学の原論』 1869年


Ⅰ 結晶形成

1. 山国では、しばしば、石の間にいろいろな物質の結晶をみるけることがある。サクロ石や山水晶の結晶はほとんど誰もが知っているものである。この山水晶の結晶は普通、透明な6面プリズムか、あるいは6面柱の形をしており、その先端は6角錐になっている。
   たとえば、自然界には、石灰石とよばれる物質があり、その結晶は、はっきりしたへき開面をもっているので、石灰石をへき開すると、いるも、面で限られた塊が得られる。これらの塊は菱面体の形をもっている。このことは、結晶の形と、結晶から切り取ることのできる形との関係をも示している。

2. あらゆる場合において必要なことは、固体の粒子が、結晶形成の際に、自由に互
いの引力に応じた方向に動いたり、配置されたりし得ることである。それゆえに、物体が液体の状態から固体へ移行する際に最も容易に結晶が生成される、この過程がゆっくりと進行すればするほど、すなわち、結晶の生成が緩慢であればあるほど、それだけきちんとした形に成長し、それだけ大きくなる。

3. 普通、結晶の生成は三つの方法に分けられる。すなわち、溶融、溶解、昇華であ
る。溶融によって結晶化を行うには、固体を完全に液状にしてしまうまで加熱し、それから、ゆっくりと冷却する。この際、最初、固い外皮が液体の表面や、容器の側面にできる。外皮にあなをあけてまだ凝固していない部分を容器から流しだす。全部固まってしまったとき、容器の壁と底に結晶が生成しているのがわかる。
   このようにして、溶解された硫黄から、斜方のプリズムのかたちをもつ結晶が得られる。
   2番目の結晶化の方法である溶解は、自然界でも、人工的にもはるかに多く使われている。溶解度の法則については後にその場所で詳しく述べることして、ここでは、誰でもよく知っている事実、すなわち、多くの固体は、ショ糖や塩が水に溶解するように、水やその他の液体に溶融または、溶解するということを思いだすにとどめておく。
   一定量の水はいろいろな物質をきまった量しか溶解せず、この溶液に含まれ得る量は、水の温度によって変化することに注目しなければならない。普通、水あるいは他の液体の温度が高ければ高いほどそれだけ多く、固体を溶解する。
   可溶な物質の結晶化の一般的方法の一つはこのことに基づいている。ある物体の熱い飽和溶液をとって、これをゆっくりと冷却させる。この際、固体の一部は溶液から分離するはずである。なぜならば、冷たい飽和溶液は、熱い飽和溶液のように多くの固体物質を含んでいることができないからである。この分離の際に、固体は普通、大小の結晶を生成する。このような方法によってきわめて多くの物体の結晶が得られる。
   たとえば、硝石を結晶化する。もし、冷却がゆっくりで、おだやかに行われるならば、硝石の大きな結晶が得られるし、もし、冷却がすみやかに進行し、液体がかくらんされるならば、できる硝石の結晶は小さい。

4. 溶液からの結晶化はしばしば他の方法によっても行われている。
それは、ゆっくりと、水あるいは他の溶液の液体を蒸発させる方法である。このためには、溶液を暖かい場所において、液体が蒸発できるようにする。この蒸発によって液体の量が減少し、残った液体がこれまで含んでいたすべての固体を含むことができなくなると、固体の一部が溶液から分離して、結晶を生成する。たとえば、このようにして食塩の立方体の結晶が得られる。たとえばロシアの東南部のカン湖では、夏の暑さで、多くの水が蒸発するので、塩が結晶の形で分離してくる。これは自家沈殿の塩と呼ばれて有名である。

5. 昇華による結晶化は、蒸気が固体の状態に移行する際に起こる。
 たとえば、大気中の水蒸気は、冬の寒さの影響をうけて自ら雪の小結晶を生成する。ガラスびんのなかにショウノウを残しておくと時がたつにつれて、その上の部分に小さな結晶が現れるのがわかる。これは、ショウノウがきわめて揮発性に富んでいるので、ショウノウの蒸気がびんの上部に集まって、そこで冷却されて結晶となるのである。

6. 物体の結晶形を決定するいろいろな法則は、これらの結晶の正確な研究を可能にし、結晶を幾何学的に分析することを助け、その結果、自然科学で最も完全なページを与えることになった。結晶の生成は正確で、完全であるため、その喜びは多くの精密な研究者たちをして、結晶学に専心させることとなった。これらのひとびとの研究によって結晶学は、きわめて正確な科学に発展したのである。
   結晶の光学的、電気的、磁気的および熱的性質の研究は、結晶学の研究を、おおいに助け、物体の結晶生成の本質をより深く理解させた。しかしながら、いまに至るまで、これについて、物体の結晶生成能力のすべての特性を予知させるような理論はできていない。

7. しかしながら、結晶となる能力をもった固体は、固体のうちのごく一部である。大部分の固体はいつも、結晶構造の痕跡すらもっていない。このような物体をコロイド、すなわち膠ニカワに似たもの、と呼ぶ。なぜならば、ニカワはそれらの物質のうちの一つであるからである。コロイドをいくつかの塊に割ると、そこにはへき開、すなわち、幾枚もの層の重なりの構造が全然みられないことがわかる。これらの物体の断面はニカワやガラスの塊の断面に似ている。

 
Ⅱ コロイドと細胞

8. 
動物および植物体の固い部分をつくってうる物質のほとんどがコロイドに属する。それが、動物や植物が、多くの鉱物のような結晶形とは似ても似つかない、実にさまざまな形をもっている理由である。少なくとも一部はそういえるであろう。
   
生物、すなわち、動物および植物では、通常水で浸されているコロイド固体は、まったく特別な形、すなわち、細胞、顆粒、繊維、無形の粘液の塊などで、結晶体のもっている形とはまったく異なっている。コロイドは溶液、あるいは溶融した状態から分離されると、コロイドが生成されていた液体の一様なかたちをとる。この最もよい例がガラスである。

 
英国のグレアム:コロイド研究 ★ここをクリック
9. コロイドは、結晶形をもっていないというだけでなく、その他の多くの性質によってクリスタロイド(晶質)とは区別されている。最近、英国の学者グレアムが示したように、これら2種の固体はいろいろな性質によって区別できる。ほとんどすべてのコロイドは、ある条件のもとでは、水に可溶、あるいは不溶な状態に移行できる。そのよい例が卵白(アルブミンあるいはタンパク質)である。

10. 卵白は生の状態では水に可溶であるが、ゆで卵のかたち、すなわち、凝固したタンパク質と呼ばれるものでは、水に不溶となる。大部分のコロイドは、不溶なかたち、もしくは不溶な状態へ、あるいはその逆の状態へ移行する場合、もし、それが水の存在の下で行われるならば、ゼリー状になる。これは、デンプン糊や、凝固したニカワゼリー、にこごりなどの性質から誰もが知っていることである。

11. クリスタロイドと区別できるコロイドの性質の一つとして、一方は膜をゆっくりと透過するが、他方はすみやかに通過することがあげられる。このことを確かめるために次のような容器を使う。
   このような膜をもった容器を透析器という。また、これを使って、コロイドとクリスタロイドとを分離することを透析という。ある時間たつと、クリスタロイドは膜を通って水へ移行するが、コロイドは、このような移行を試みたとしても、比較にならないほどゆっくりである。
   もちろん、クリスタロイドは、膜の両側で水中のその含量が等しくなるまで移行するのである。外側の水を新しくかえると、透析器から新たにクリスタロイドの透析をうながすことができる。結晶体が完全に膜を通してでていった時点では、コロイドはほとんど全部完全に透析膜内に残っている。それゆえに、透析によって、溶液中に共存しているこの二種類の物体を分離できるのである。

12. 疑いもなく、透析(浸透および滲出)は、すべての生物で行われている。なぜならば、動植物
の細胞の組織および膜は透析を行う性質をもっているからである。植物の幼根や毛細根は、土壌の溶液からある種の物質だけを、他のものよりすみやかに吸収しなければならない。これらの物質は体内に吸収された後には、植物の葉が水分を蒸発させているので、植物の体内を移動し、そのために、これらの土壌物質は根からはいって植物の他の部分全体にいきわたるのである。

13. コロイド物質の性質やそれが膜を透過する現象を研究すれば、生物内で起こっている現象について多くのことが明らかされるに違いない。 
   固体を研究する場合には、固体が結晶をつくる能力をもっているかどうかに注目し、へき開、その物体の結晶形、それらのコンビネーション、角およびある形の生長を与える能力などを測定する。なぜならば、これは、均一な物体を互いに区別するための最も重要な特徴であるからである。鮮明な結晶を生成する能力は物質の均一性を示す特徴の一つである。結晶化によってクリスタロイドをコロイドの不純物から分離したり、しばしば二つの結晶体を互いに分離したりできる。

以上