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 用語資料 翻訳問題-『資本論』の翻訳語



 第2回 萌芽形態、社会的な蛹化、幼虫


 第1回 成素形態、変態、化身 

  

 資本論テーマ別 3月号

  『資本論』 第1版 序文 

 「商品の価値形態は、経済の細胞形態である」 (岩波文庫p.12)


              コラム2 『資本論』のGallert/膠状物・凝結物とKeim/萌芽(胚芽) を参照


  Keim 胚 : 多細胞生物で、受精後に発生を始めた卵細胞・幼生物。 動物では母体内から産み出される前か、または孵化以前で卵黄から養分を吸収している時期のもの、植物では種子中にある幼植物。(広辞苑)

  『資本論』では、「単純な価値形態」を経済の「細胞形態・胚 Keim」として、商品の分析が始まっていることに注目してください

    

★目 次

第1. 萌芽()形態

第2. 幼虫 larve

第3. サナギ・蛹 Puppe、Chrysalide 蛹化Verpuppung 蛹化する

第4.  羽化 Entpuppung 繭を出て zu entpuppenチョウ


第1.
萌芽形態 Keimform (Keim:胚)


  第1章第3節 価値形態または交換価値 A 単純な、個別的な、または偶然的な価値形態
  4.単純な価値形態の総体
1.  「労働生産物は、どんな社会状態においても使用対象である。しかし、ただある歴史的に規定された発展段階のみが、一つの使用物の生産に支出された労働を、そのものの「対象的」属性として、すなわち、その価値として表わすのであって、この発展段階が、労働生産物を商品に転化するのである。したがって、このことから、商品の単純なる価値形態は、同時に労働生産物の単純なる商品形態であり、したがってまた、商品形態の発展も価値形態の発展と一致するという結果になる。
 一見すれば、すぐ単純な価値形態の不充分さがわかる。この形態は、一連の
変態(Metamorphose)をへて、やっと価格形態に成熟してくる萌芽形態 Keimform なのである。



  
B  貨幣形態

2.  「貨幣形態という概念の困難は、一般的等価形態の、したがって、一般的価値形態なるものの、すなわち、第三形態の理解に限られている。第三形態は、関係を逆にして第二形態に、すなわち、拡大された価値形態に解消する。そしてその構成的要素は第一形態である。すなわち、亜麻布20エレ=上衣1着またはA商品x量=B商品y量である。したがって、単純なる商品形態(Warenform)は貨幣形態(Geldform)の萌芽 Keim である。」

第2. 幼虫
Larve Raupe

 第3章2節 b 貨幣の流通


3. 「商品の第一の変態は、貨幣の運動としてばかりでなく、商品自身の運動としてもみられる。しかし、その第二の変態は、貨幣の運動としてしか見えない。その第一の流通半路においては、商品は貨幣と場所を変える。これとともに、同時に商品の使用態容(Gebrauchsgestalt)は流通から脱落して、消費にはいる。その価値態容(Wertgestalt)または貨幣の幼虫(Geldlarve)〔筑摩書房・今村訳による。向坂訳などは貨幣「仮面」と訳している〕が、その後を占める。第二の流通半路を、商品はもはやそれ自身の自然の皮膚をもってでなく、その黄金の皮膚をもって経過する。」
 
注:貨幣の幼虫>この段落全体は「商品の変態」がテーマであることから、当然に「貨幣の幼虫」となる。女王バチの幼虫Bienenkoniginlarve、資本家の幼虫Kapitalisten raupe(昆虫の幼虫、イモムシ)、チョウの蛹・サナギはPuppe。 幼虫が蛹になるDie Raupe wird zur Puppe.



第3 サナギ・蛹 Puppe、Chrysalide 蛹化Verpuppung 蛹化する
    
      
蛹化:昆虫の幼虫が変態し、サナギになること

  
第1章 第3節 価値形態または交換価値 C 一般価値形態

4.  「商品世界の一般的な相対的価値形態は、この世界から排除された等価商品である亜麻布に、一般的等価の性質をおしつける。亜麻布自身の自然形態は、この世界の共通な価値形態であり、したがって、亜麻布は他のすべての商品と直接に交換可能である。この物体形態〔身体形態〕は、一切の人間労働の眼に見える化身〔Inkarnation:受肉〕として、一般的な社会的な蛹化Verpuppung としてのはたらきをなす。

  
第3章 貨幣または商品流通 第2節 a 商品の変態 Die Metamorphose der Waren
5.  「金が実在的な貨幣となるのは、諸商品がその全面的な売渡しによって、金を諸商品の現実に脱皮した、または転化した使用態容となし、したがって、諸商品の現実の価値態容となすからである。その価値態容においては、商品は、その自然発生的にもっている使用価値、そしてその成立を負っている特別な有用労働の、あらゆる痕跡をはらい落している。こうして、無差別な人間労働の一様な社会的な体化物〔Materiatur〕に蛹化していく zu verpuppen のである。したがって、人は貨幣にたいしては、貨幣に転化された商品がどんな種類のものかということを、少しも顧みない。
 
6.  「一商品の循環をなす二つの変態は、同時に、二つの他の商品の逆の部分変態をなす。この同じ一つの商品(亜麻布)は、それ自身の変態の序列を開始し、他の一商品(小麦)の総変態を閉ざす。第一の変転、売りの間に、この商品は、身一つでこの二つの役割を演ずる。これに反して、それ自身死という万物の運命をたどるほかない金の蛹 Goldchrysalide として、商品は、同時に第三の商品の第一の変態を終結させるもとになる。



  
第3章第3節 貨幣 a 貨幣退蔵
7.
  「商品流通そのものの最初の発展とともに、第一の変態の生産物、すなわち、商品の転化された態容、またはその金蛹 Goldpuppe を、確保するという必然と情熱とが、発展してくる。商品を買うためでなく、商品形態を貨幣形態で置き換えるために、商品は売られる。この形態変化が、物質代謝の単なる媒介から自己目的となる。

  
第4章 貨幣の資本への転化 第2節 一般定式の矛盾
8.  「貨幣の資本への転化は、商品交換に内在的な法則の基礎の上に展開すべきものである。したがって、等価物の交換が出発点として考えられる。まだ資本家の幼虫Kapitalistenraupeとして存在しているにすぎないわが貨幣所有者は、商品をその価値で買い、その価値でうらなければならぬ。そしてそれにもかかわらず、この過程の終わりには、彼が投入したより多くの価値を引出さなければならない。

彼の蝶チョウへの発展Schmetterlingsentfaltungは、流通部面でおこなわれなければならず、また流通部面で行なわるべきものでもない。これが問題の条件である。Hic Rhodus, hic salta! 〔ここがロドスだ、さあ飛べ!〕


第4 羽化 Entpuppung マユを出て zu entpuppen チョウSchmetterling
(サナギから羽化するentpuppen:昆虫が、幼虫またはサナギから成虫に脱皮・変態すること。蛹化は、昆虫が幼虫からサナギになるときに行う脱皮・変態のこと。種類によっては蛹化する前に繭マユを形成し、その中で蛹化する昆虫もいる。カイコの繭など)

 
第4章第2節


9.
  「貨幣が資本に羽化する〔<注:蛹化は誤り>Die Zirkulationsform worin sich das Geld zum Kapital entpuppt〕流通形態は、商品、価値、貨幣および流通自身の性質にかんして以前に述べられた、すべての法則に矛盾する。この形態が単純なる商品流通から区別されるところは、同じ二つの相対立せる過程、売りと買いの順序が転倒されていることである。いかにしてこのような純粋に形式的な差異が、これらの過程の性質を魔法のように変えてしまうことができるだろうか?」


 
  
第9章剰余価値の率と剰余価値の量


10.
  「個々の貨幣所有者または商品所有者が、マユを出て資本家となる〔羽化して資本家となるeinen Kapitalisten zu entpuppen〕ために、自由に処理しえねばならない価値額の最小限は、資本主義的生産の種々の発展段階において異なり、また与えられた発展段階にあっては、種々の生産部面において、それらの特別な技術的諸条件に応じて異なる。」

以上