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  2016年

 『資本論』入門 2月創刊号 



  これから1年間、入門編の資本論ワールド・世界旅行の旅に出かけます。
 
長い旅路になりますので、お出かけ準備を入念に行なってゆきます。
 
HPの文献資料と新着情報のほか、上記一覧表の各テーマを参照しながら、ガイドブック同伴で、快適な旅行となりますように
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  『資本論』入門について
 
 
 編集方針    
    *本文の下線箇所をクリックしてください。引用文 参照です。


 『資本論』ワールドの特徴は、原典・引用文献に重点をおいています。
 目的は、
 1. できるだけ、本文そのものに慣れ親しむこと。
 2. 外国文献であり、日本文化とは「異質」であること。
 3. 著者マルクスの「思考の道筋」を追ってゆくこと。
 4. 「入門編」は、読者の一生の航路を決定すること。


 1年12回に分けて、『資本論』を読んでゆきます。
 日本語に翻訳された『資本論』は、西洋文化の伝統の軽視と誤解があり、 マルクス・キーワードの復元を図ってゆきます。

  
西洋思想の歴史を大きく 4つに区部してあります。

  1. 古代ギリシャ文化とアリストテレス
 2. 中世キリスト教神学
デカルト革命
 3. 西洋科学史、とくに生命科学
 4. ヘーゲル哲学

 『資本論』は、第1章冒頭から「ギリシャ思想」の中心概念で始まります。
 「
社会の富は、「巨大なる商品集積〔集合〕」として現われ、個々の商品は、 この富の成素形態として現われる。
  商品集積〔
集合〕と成素形態〔Elementarform〕とは、対概念(セット)です。 この「成素」と「集合(集積は誤解を招くので要注意)」を <翻訳問題>として、他の箇所で解説をしています。

 
「個々の商品」が「成素Element}として現象している、この「一行」は、 『資本論』全篇・全体を貫くキーワードとなっています。 このキーワードの理解には、アリストテレスの『形而上学(第一哲学)』 (古代ギリシャ哲学)が要求されています。 西洋文化にしめる「Element」は、伝統的に特殊な論理構造をもつ文脈で使用される概念なのです。

  <注> 3月号・新着情報 「iPS細胞とは何か」 において、成素形態Elementarform と「細胞形態」の相互関連について、ご案内しています。


 毎月『資本論』を読み進めながら、大きく4つに区分された西洋思想を跡づけ、キーワードの関連性を読み解いてゆきます。
 たどたどしい歩みのように思えるかもしれません。 アリストテレスやトマス・アクィナスと一緒に

 真理からそれることがはじめはほんのわずかであっても、先へすすめばそれがいよいよ大きくなるものだからである



    
新着情報2016.3-12

       



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 編集委員会ご挨拶 


  資本論ワールドへようこそ

  
  
//  ゲゲゲの鬼太郎の水木さん  // 

  
「妖怪というものは、いかがわしく、とらえどころのないものである。逃げやすく、つかみにくい、そんなものはもともといないのではないか、という人もあるが、いないとも言いきれない。なにかいるのだ。」

  
「妖怪というと、よくお岩の幽霊なんかまで仲間に入れて気味悪がる人もいるが、お岩は幽霊であって妖怪ではない。妖怪とは河童とか、海坊主とか、牛鬼とかいったもので、こわいけれども、どことなく愛嬌のあるものだ。」

 
「妖怪を感ずるか、感じないかは、もって生れた“妖怪感度”とでもいうべきものによると思うのだが、 感度の高い人と低い人とあるような気がする。」  (『妖怪天国』筑摩書房)


 
 商品の「価値」は、ゲゲゲの鬼太郎みたいだ

  「商品の価値」(『資本論』)が話題に登るとき、ゲゲゲの鬼太郎がひょっこり。
  皆さんも記憶されているいるでしょう、「妖怪のような」話から、商品の価値話しは始まるんです。
  「われわれはいま労働生産物の残りをしらべて見よう。
  もはや、妖怪のような同一の対象性〔gespenstige Gegenständlichkeit〕以外に、 すなわち、無差別な人間労働の、いいかえればその支出形態を考慮することのない、人間労働力の、単なる膠状物〔Gallert:ゲル〕というもの以外に、労働生産物から何ものも残っていない。」
(注)
 水木さんの“妖怪感度の高い人、低い人”を思い出させるのですが、では、そもそも「商品の価値ってなんぞや」。こんな疑問を胸に秘めながら、謎解きワールドに皆さんをご招待したいと思います。どうぞ、ごゆるり散歩気分で、ちょっぴりこわ~い緊張感をもってご一緒しましょう。


 (注)
Gallertとヘーゲル『大論理学』
無差別な人間労働の、いいかえればその支出形態を考慮することのない、人間労働力の、単なる膠状物〔Gallert:ゲル〕というもの以外に、労働生産物から何ものも残っていない。」
 「
支出形態を考慮することのない、人間労働力の、単なる膠状物」-このフレーズは、マルクスがヘーゲル『大論理学』から転用したものです。
 『大論理学』第2巻本質第3章根拠 der Grund
 「
本質は自己自身を根拠として規定する
 根拠はまず第一に絶対的根拠 absoluter Grund である。そして本質はこの絶対的根拠においては、まず差し当って根拠関係 Grundbeziehung に対する根底 Grundlage 一般という一般という形で存在する。しかし、この根拠はつぎに形式 Form と質料 Materie として規定され、また内容 Inhalt が与えられる。」
 
 (b) 形式と質料 ー要約ー
「 1. 本質の反省が無形式的な無規定者としての本質に対して関係するものと規定されることによって、本質は質料となる。故に質料は、形式の他者であるという規定をもつところの単純な区別のない同一性である。即ち、この同一性は本質なのである。だから形式の文字通り根底 Grundlage または基体 Substrat である。」
 2. 
或る物のすべての規定、すべての形式が捨象されるとき、そこには無規定な質料が残る。質料は全くの抽象物である。(質料は見たり、感じたりできない。見たり、感じたりされるものは、或る規定的な質料である。即ち、それは質料と形式との統一である。)
 3. 質料は形式に対して無関心なものではあるが、しかしこの無関心性は形式が還帰して行く根底としての自己同一性の規定性である。それで、形式は質料を前提する。
 4. 質料は形式化されなければならないが、また形式は質料化されて、質料の中で自己同一性または存立を獲得しなければならない。」


 
  
カール・マルクスの伝言
 「私が用いた分析の方法は、まだ経済上の問題に適用されたことのなかったものであって、初めの諸章を読むのはかなりむずかしいのです。学問には坦々たる大道はありません。そしてただ、学問の急峻な山路をよじ登るのに疲労こんぱいをいとわない者だけが、輝かしい絶頂をきわめる希望をもつのです。」        1872年3月18日 カール・マルクス


 
  さて、『資本論』を入門編から商品の物神的性格や 「
心と脳科学」 まで 幅広く・奥深く探究してゆきます。
  特に第1章は難関中の難関ですが、一歩ずつの山登りとガイドブック持参のヨーロッパ文化を訪ねてゆきます。アリストテレス、ヘーゲルなど哲学史や中世キリスト教神学を巡ってゆきます。 また、『資本論』序文や本文に叙述されている西洋生命科学の伝統を追体験しながら、時にはドイツ語の語源からも学んでゆきます。
 
さあ、あなたも資本論ワールド探検隊の一員だ


 
  
文献資料

 ヘーゲル『大論理学』第2巻本質第3章根拠 der Grund


 
 マルクスの序文とエンゲルスの解説 

  社会的分業 (社会構造論) 
  物質代謝   (生態系を考える) 
  社会的生産有機体
  (自然と社会)
  アダム・スミスの分業・貨幣論

  

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 A.  創刊号特集 翻訳問題 ・・・ これって、あり?・・・

 
 妖怪のような ・ まぼろしのような ・ 幽霊じみた、・・・
     これみんな,マルクスのドイツ語は「
gespenstisch

 
 変態 ・ 姿態変換 ・ 転身 ・ 変身、・・・
     これみんな、マルクスのドイツ語は「
Metamorphose

  ことばや言語は、それぞれの歴史的な伝統文化を経て形成され現代に至っています。日本語に翻訳される時、その言語変換メカニズムの説明が適切に解説されなければなりません。驚くことに、これまでの『資本論』には翻訳されたキーワードの説明がありません。 『資本論』が難しいと言われる理由のひとつに、翻訳者まかせの業界の現状にも責任があります。


 B. 『資本論』は、ヨーロッパ伝統分化 の宝物に満ち満ちています。 アリストテレス、ヘーゲルはもちろんのこと、「商品の物神的性格や人格化・ペルソナ」は、キリスト教神学の世界です。
 唯物論者のマルクスが、なぜ「観念論」の哲学や宗教用語・概念で「商品世界」の分析をしているのでしょうか。この謎と神秘の境界を巡ってゆきます。

  
 C.  『資本論』の細 胞 理 論

 「労働生産物の商品形態または商品の価値形態は、経済の細胞形態」 と言われています。
この「細胞形態」の発見は、19世紀生命科学史の
ターニングポイント(理解の仕方で運命の分かれ道に通じてゆく)。現代のiPS細胞へとつながるキーワードの一つで、はたして、マルクスの時代の「細胞」とは何か。


 
 テーマ別コーナー
『資本論』をより深く、探究してゆくためのコーナーです。巨人たちの肩に乗ったマルクスの素顔に密着してゆきます。


 D. 『資本論』のヘーゲル哲学   

 「ヘーゲルの弟子である」と告白するマルクス。ヘーゲル哲学への第一歩を踏み出してゆきます。最初に登場するのが、レーニンの『哲学ノート』です。意外に思われるかもしれませんね。私たち日本人には大変耳の痛いコメントがあります。 
今年2018年は、ヘーゲル特集に全力傾注しています



 E. 『資本論』の キリスト教神学   

 中世キリスト教神学の中心を担ったトマス・アクィナス。 翻訳語の「
人間労働の化身 Inkarnation」は、「受肉」のことです。「神・キリストの人間化」の論理です。ちょっとした視点の転換で、『資本論』がぐっと身近に感じられてきます。 



 F.  『資本論』のアリストテレスと古代ギリシャ哲学  

 難解な第3節:価値形態において、アリストテレスは、「5台のベッド=1軒の住宅」は「5台のベッド=ある量の貨幣」の価値関係を示している、と紹介しています。また、古代ギリシャ思想家のタレス、ピタゴラス、ソクラテスそしてプラトンらの伝統を受け継ぎながら、第1章の道筋を展開しています。奥が深いヨーロッパ文化を探索しましょう。


 G. ピケティとグローバル資本主義 

 “ピケティ旋風”が世界中を駆け巡りました。そして次が、“トランプ旋風”
  ピケティは、格差社会の病根を200年超にわたる歴史の所産として解剖しています。経済学「原理論」批判としても、興味深いものがあります。また、日本アメリカ中国三国を中心に経済産業データからグローバル資本主義を展望してゆきます。(・・・
この項目は作業中です・・・2019.05.01)

 以上、とてもとても盛沢山となりました。 


  
資本論ワールド探検隊、元気よく、根気強く、前進しましょう!!