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 金融政策と偽った財政ファイナンス
 
 人の営みを無視したマイナス金利

                 
    週刊エコノミスト(毎日新聞出版)2016年 4月19日号

           浜 矩子
(はま のりこ) (同志社大学大学院教授)



 日銀は政府専任の金貸し業者になり、アホノミクスの一員に成り下がった。
いまや日銀は日本国債の最大保有者となり、その保有残高が国内総生産(GDP)の額を上回るのはあと2~3年という段階だ。
 そもそもなぜ物価目標が2%なのか。欧米の中央銀行と同じという以外に説明はない。結局のところ、物価目標は建て前に過ぎず、本当の狙いは、国債の買い支えだろう。この「財政ファイナンス」という下心が本心だと考えれば日銀の政策はつじつまが合う 。出口論を言いたがらないのは財政ファイナンスをやめたくないからで、むしろインフレ率が2%に達しなかったことさえもラッキーだと思っているのではないか。
 中央銀行が政府の回し者に甘んじて、全体主義的に政府と二人三脚で行動するのは、独裁国家と同じ発想だ。本来、そうならないために中央銀行の独立性が法律で定められている。政府はそのうち強権を発動して、銀行に貸し出しをしろと言い始める可能性 さえある。 仮に財政ファイナンスの意識がないとしても、「通貨の番人」である日銀が自国の通貨価値を下げて円安を誘導するのは異常だ 。円安で日本企業が空前の収益と言われるが、外貨を円建てに換算した算数の話である。だから円安でも輸出数量は伸びていない 。

日本は今や輸入大国で、日本経済の体質が変わったのかを把握していない。安倍首相は2015年の年頭所感で「1960年代の日本にできて今の我々にできないわけがない」という趣旨の発言をしている。いまだに「円安→神風→バンザイ」という単純な発想に陥っている。どこまで浦島太郎なのか。また、失業率が下がったと喜んでいるが、表面的な数字を見て雇用の質を見ていない。マイナス金利の導入では、日銀は人々の行動を見抜けなかった。
多くの人は賃金が上がらないなかで将来に不安を抱いている。預 貯金を増やすのは合理的な選択というものだ。マイナス金利で預金金利が下がれば、将来必要なおカネをさらに心配する。結局、 黒田日銀は経済活動が人の営みであることを無視している。

経済は人の営みだから、リーマン・ショックや上海株暴落が起きる。 彼らは恐慌が起こらないと思っており、経済を侮っている。非常時に打つ不条理の金融緩和が長期化し、条理になっている。日銀は、出口はおろか「異次元」のさらにかなたへ行き、次の入 り口へ入ろうとしている。日銀は、通貨の価値を守り、国債専任買い取りもやめ、金利がある条理な世界に出て、経済バランスを 崩す今の政策をやめるべきだ。