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資本論用語事典2021
  
『資本論』の Element 抄録
  
Element の形式活動 - Elementarform

 ヘーゲル「小論理学」
形式規定と形式活動
§140, §145-153
価値の形式活動

  
 『資本論』の 
Element 成素と要素/構成要素
   -
Elementarformの成立過程 -

  資本論ワールド 編集部
 『資本論』第1章~第3章 Element (成素、要素)抄録

Elementの科学史2021

    資本論ワールド 編集部

1-1 資本主義的生産様式〔 kapitalistische Produktionsweise:資本制生産の方法〕の支配的である 社会の富は、「 巨大なる商品集積〔”ungeheure Warensammlung":そら恐ろしい商品の集まり・集合/商品物神 〕」として現われ、個々のeinzelne 商品はこの富の 成素形態 〔Elementarform:元素の形式〕 として 現われる (erscheint:ヘーゲル現象学)。したがって、われわれの研究は商品の分析をもって始まる。(『資本論』第1章第1節商品の2要素使用価値と価値)


    Elementarformの成立過程

 
1. わたしたちは、Element 概念(元素/要素/成素)の追跡を通して、Elementの生成・成長過程-Elementarform-の探究が可能となります。


 2. 最初に、Element (古代ギリシャではストイケイオン“stoicheion” )が「発見的要素」として認識されます。(紀元前6世紀・古代ギリシャ/タレスの時代


 3. 次に、自然界と人間社会で「存在の比例性」が分析科学として成立します。(紀元前4世紀・アリストテレス科学)


 4. 西洋の中世社会を経て 「比例性 : Verhältnis (比例関係)」の発見は、事物の系列を把握してゆきます。(17世紀・デカルトの“系列”-数学思想


 5. こうして、当初の発見的要素であったElement・元素 は、つぎの段階としての「構成要素 Element」が複合した「比例性・系列」へと「新たな質」が獲得されてゆきます。(19世紀・生物界の細胞形式, 化学原子・元素と周期性の成立など


 6. 古代ギリシャから19世紀後半、ダーウィン進化論とともにマルクス弁証法の段階で「Element」は、「Elementarform 構成要素の系列フォーム」として概念形成し、成立します。
 7. 『資本論』の探究では、
  「 社会の富は、 巨大なる商品集積〔”ungeheure Warensammlung":そら恐ろしい商品の集まり・集合-物神性 〕」として現われ、個々の商品はこの富の成素形態 〔Elementarform:元素/構成要素の形式〕 として現われる erscheint」ことになります。
  「 したがって、われわれの研究は商品の分析をもって始まる。」
  マルクスの「商品の分析」方法は、Elementの形式活動(ヘーゲル「小論理学」実体性の相関Verhältnis§150-§151)として 『資本論』の弁証法-“発展 Entwicklung”形式をヘーゲル論理学の方法から継承してゆきます。(「小論理学」§161. 161補遺参照)

8. 第1篇第1章第1節-「個々の商品はこの富の成素形態/構成要素Elementの形態/形式form」は、第2篇第4章貨幣の資本への転化 で、「Element」は、流通形式 W―G―W、G―W―G として「商品と貨幣/二つの同じ物的要素・sachlichen Elemente」に成長・転化 Elementarform してゆきます。

  さて、具体的に、『資本論』本文から Element-Elementarform を探究してゆきましょう。

  ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

   『資本論』の Element
  
 ◆ 目次
 1) 社会の富の成素形態/構成要素の形式 Elementarform
     11) 流通形式 W―G―W から G―W―Gへ
 2) 素材的富のあらゆる要素
 3) 自然素材と労働の2要素の結合
 4) 使用価値の形成諸要素 Bildingselemente
 5) 商品世界の無数の(諸)成素 Elemente
 6) 構成的要素/構成する要素 Konstituierendes Element
 7) 空気を成素 Element に分解
 8) 主要な要素 Hauptelement
 9) 素材的要素/要因 stofflichen Moment
 10) 素材的富のすべての要素 alle Element des stofflichen Reichtum
 11) 流通形式-社会の富の物的要素 sachlichen Element
     第2篇 貨幣の資本への転化
  〔流通形式-商品と貨幣/二つの
同じ物的要素・sachlichen Elemente
  第4章 貨幣の資本への転化/
変身・変態 Verwandlung von Geld in Kapital
  ...................................................................
 

 『資本論』第1篇商品と貨幣
 第1章 商品
第1節 商品の
2要素 使用価値と価値 (価値実体, 価値の大いさ)
   
Die zwei Faktoren der Ware: Gebrauchswert  und Wert (Wertsubstanz, Wertgröße)
   表題「商品」の2要素Faktor (英語:factor)は要因・原動力・[数]因数で、 Element と区別しています詳細は、こちらへ。(2021.03.29 作成中です)

      〔 社会の富の構成要素としての商品 〕 
1-1 資本主義的生産様式〔 kapitalistische Produktionsweise:資本制生産の方法〕の支配的である社会の富は、「 巨大なる商品集積〔”ungeheure Warensammlung":そら恐ろしい商品の集まり・集合 〕」として現われ、個々のeinzelne
商品はこの
富の成素形態 〔Elementarform:元素・構成要素の形式〕 として現われる erscheint。したがって、われわれの研究は商品の分析をもって始まる。(岩波文庫p.67)


  第2節 商品に表わされた
労働の二重性
     
Doppelcharakter der in den Waren dargestellten Arbeit 
         〔 素材的富のあらゆる要素 〕 
2-7  しかしながら、上衣・亜麻布等、自然に存在しない
素材的富のあらゆる要素が現存するようにたったことは、特別な人間的要求に特別な自然素材を同化させる特殊的な目的にそった生産活動によって、つねに媒介されなければならなかった。したがって、使用価値の形成者として、すなわち、有用なる労働としては、労働は、すべての社会形態から独立した人間の存立条件であって、人間と自然との間の物質代謝を、したがって、人間の生活を媒介するための永久的自然必然性である。(岩波文庫p.80)

     〔 自然素材と労働の要素の結合-転化verwandeln:別の状態へ変化させる
2-8   上衣・亜麻布等々の使用価値、簡単に
商品体 Warenkörperは、自然素材と労働という二つ要素の結合〔Verbindung:化合〕である。上衣・亜麻布等々に含まれているちがった一切の有用労働の総和を引き去るならば、つねに入間の加工なしに自然に存在する物質的基盤〔自然素材〕が残る。人間は、その生産において、自然みずからするようにするほか仕方のないものである。すなわち、ただ素材の形態を変更するほかに仕方のないものである(注13)。さらに、この製作の労働そのものにおいても、人間はたえず自然力の援けをかりている。したがって、労働はその生産する使用価値の、すなわち素材的富の、唯一の源泉ではない。ウィリアム・ペティがいうように、労働はその父であって、土地はその母である。(岩波文庫p.81)

(注13) 「宇宙の一切の現象は、それが人間の手によってもたらされようと、物理学の一般法則によってもたらされようと、事実上の新創造ではなくして、単に素材の形態変更であるにすぎない。複合と分離は、人間精神が再生産の観念の分析にあたって、いかなるときにも見出す
唯一の要素である。そして、価値(使用価値のこと。むろん、ヴェリはこのばあいその重農学派にたいする論争において、どんな種類の価値について自分が語っているのかを、自分ではよく知らないのである)と富の再生産についても、土地・空気および水が、耕地で穀物に転化される〔verwandeln:別の状態へ変化させる〕ばあい、あるいはまた人間の手によってある種の昆虫の分泌物が絹糸に転化され、あるいは若干の金属の小片が一つの時打ち懐中時計をつくるために組み立てられるばあいで見るように、ことは同様である」(ピエトロ・ヴェリ『経済学にかんする考察』―初版、1771年―。クストディの『イタリアの経済学者』版で刊行。近代篇、第15巻、21、22ページ)(岩波文庫p.81)。

   〔使用価値の形成要素:Bildungselemente と“価値の実体”〕
2-11   したがって、上衣や亜麻布という価値においては、その使用価値の相違から抽象されているように、これらの価値に表わされている労働においては、その有用なる形態である裁縫や機織の相違から抽象されている。上衣や亜麻布という使用価値が、目的の定められた生産的な活動と布や撚糸との結合であるように、上衣や亜麻布という価値が、これと反対に、
単なる同種の労働膠状物 〔(社会的 Element):bloße gleichartige Arbeitsgallerten〕 であるように、これらの価値に含まれている労働も、布や撚糸にたいするその生産的な結びつきによるのでなく、ただ人間労働力の支出となっているのである。上衣や亜麻布という使用価値の形成要素 Bildungselemente は、裁縫であり、機織である。まさにそれらの質がちがっていることによってそうなるのである。それらの労働が上衣価値や亜麻布価値の実体 Substanz であるのは、ただそれらの特殊な質から抽象され、両者が同じ質、すなわち人間労働の性質をもっているかぎりにおいてである。(岩波文庫p.84)


 第3節 
価値形態または交換過程
     Die
Wertform oder der Tauschwert

  B 総体的または拡大せる価値形態 
     〔全体的または展開された Totale oder entfaltete Wertform 〕

 1 拡大された相対的価値形態
   〔 亜麻布の価値は商品世界の無数の他の成素に表現されるー
    -
無差別な人間労働の凝結物Gallertとして現われる
1. 一商品、例えば、亜麻布の価値は、いまでは
商品世界の無数の他の成素 zahllosen andren Elementen der Warenwelt に表現される。すべての他の商品体は亜麻布価値の反射鏡となる(23)。こうしてこの価値自身は、はじめて真実に無差別な人間労働の凝結物として現われる。(岩波文庫p.115)


  D 貨幣形態 -構成する要素・Elementarform

     〔価値形態を構成する要素:konstituierendes Element
4.  貨幣形態という概念の困難は、一般的等価形態の、したがって、一般的価値形態なるものの、すなわち、第3形態の理解に限られている。第3形態は、関係を逆にして第2形態に、すなわち、拡大された価値形態に解消する。そしてその構成的要素〔konstituierendes Element:構成する要素〕は第1形態である。すなわち、亜麻布20エレ=上衣1着 または A商品x量=B商品y量である。したがって、単純なる商品形態〔すなわち、A商品x量=B商品y量〕は貨幣形態の萌芽〔Keim:胚、胚芽-系列のElementである。(岩波文庫p.129)


 〔 
編集部注構成的要素〔konstituierendes Element:構成する要素〕は第1形態であるー 構成的要素(Elementarform)と第3節価値形態論について、第2章交換過程で、集約を行なっています。
   「
A商品x量=B商品y量というもっとも単純な価値表現 〔第1形態〕 において、すでに、ある他の物の価値の大いさを表示している一物が、その等価形態を、この関係から独立して社会的の自然属性としてもっているように見えるということを、われわれは知ったのである。われわれは、この誤った外観〔falschen Scheins:誤った仮象(ヘーゲル論理学)〕がどうして固定していくかを追究した。この外観は、一般的等価形態が、ある特別な商品種の自然形態と合生し〔verwachsen:合体する、合生する〕、または貨幣形態に結晶する〔kristallisiert:結晶する、明確な形をとる〕とともに、完成するのである。一商品は、他の諸商品が全面的にその価値を、それで表示するから、そのために貨幣となるのであるようには見えないで、諸商品は、逆に一商品が貨幣であるから、一般的にその価値をこれで表わすように見える。媒介的な運動は、それ自身の結果を見ると消滅しており、なんらの痕跡をも残していない。
  諸商品は、自分では何もするところなく、自分自身の
価値の姿Wertgestaltが、彼らのほかに彼らと並んで存在する商品体として完成されているのを、そのまま見出すのである。これらのもの、すなわち、土地の内奥から取り出されてきたままの金と銀とは、同時にすべての人間労働の直接的な化身Inkarnationである。このようにして貨幣の魔術が生まれる。人間がその社会的生産過程で、単に原子的な行動を採っているにすぎぬということ、したがって、彼らの規制と彼らの意識した個人的行為とから独立した彼ら自身の生産諸関係の物財的な姿sachliche Gestaltは、まず、彼らの労働生産物が一般的に商品形態をとるということの中に現われるのである。したがって、貨幣物神 Geldfetisch の謎は、商品物神 Warenfetisch の目に見えるようになった、眩惑的な謎であるにすぎないのである。」(岩波文庫p.167)〕



 第4節 商品の物神的性格とその秘密
      〔空気をその成素/要素に分析〕
8.   この特別なる生産形態、すなわち、商品生産にたいしてのみ行なわれているもの、すなわち、相互に独立せる私的労働の特殊的に社会的な性格が、人間労働としてのその等一性にあり、そして労働生産物の価値性格の形態をとるということは、かの発見以前においても以後においても、商品生産の諸関係の中に囚(とら)われているものにとっては、あたかも
空気をその成素 Element に科学的に分解するということが、物理学的物体形態としての空気形態を存続せしめるのを妨げぬと同じように、終局的なものに見えるのである(岩波文庫p.135)。
  〔中山元訳:科学によって空気がそれを構成する元素に分解されたとしても、空気は物理的な形態としては空気のままであるのと同じことである。(日経BP社 p.127)〕

   第2章 交換過程
     〔譲渡可能な所有物/財産の主要な要素 Hauptelement
9.  直接的な生産物交換においては、すべての商品は、直接にその所有者にとっては交換手段、その非所有者にとっては等価Äquivalentである。もちろん、それがこの非所有者にとって使用価値であるかぎりにおいてである。したがって、交換物品は、まだなんらそれ自身の使用価値から、または交換者の個人的欲望から、独立した価値形態を得ていない。この形態の必然性は、交換過程にはいる商品数が増大し、多様化されるとともに発展する。課題は、その解決の手段と同時に発生する。・・・
・・・しかし、商品交換の発達とともに、一般的等価形態は、もっぱら特別な商品種besondere Warenartenに付着する、すなわち、結晶して貨幣形態kristallisiert zur Geldformとなる。どの商品種に付着してしまうかは、まず初めは偶然である。だが、大体においては二つの事情が決定する。貨幣形態は、あるいは、外域からのもっとも重要な交換品目に付着する。それらの物品は事実上、領域内生産物の交換価値の自然発生的な現象形態である。あるいはまた、例えば家畜のように、領域内の譲渡しうべき
所有物の主要素 Hauptelement をなす使用対象に付着する。遊牧民族が、最初に貨幣形態 Form を発展させる。・・・(岩波文庫p.160)


第3章貨幣または商品流通 第2節 流通手段
 a 商品の変態
     〔素材的な要素/要因 stofflichen Moment 〕
3.  この形態変化〔Formwechsel:形式変化〕を、きわめて不充分にしか理解しないのは、価値概念そのものにかんしてはっきりしていないのを別とすれば、次の事情によるのである。すなわち、ある商品の形態変化は、すべて二つの商品、すなわち、普通の商品と貨幣商品の交換において行なわれるということである。この
素材的要素(stofflichen Moment)である商品と金との交換をのみ固執すると、人は、まさに見なければならぬもの、すなわち、形態/形式 Form について起こることを看過する。金は単なる商品としては貨幣でないということ、そして他の諸商品自身がその価格を金で表わすことによって、金は商品そのものの貨幣態容 Geldgestalt となっているということ、人はこれを見のがしている。・・・(岩波文庫p.185)


  第3章貨幣または商品流通 
  第3節 貨幣 a 貨幣退蔵
  〔 素材的富の
特別の要素ein besondres Element,-素材的富のすべての要素 alle Elemente、ー貨幣の価値は社会的な富-直接に社会的な化身/受肉 die unmittelbar gesellschaftliche Inkarnation
5.  使用価値としての商品は、特別の欲望を充足させ、素材的富の特別の要素ein besondres Element des stofflichen Reichtumsをなしている。しかしながら、商品の価値は、
素材的富のすべての要素 alle Elemente des stofflichen Reichtums にたいする商品の吸引力の度を、したがってその所有者の社会的な富 gesellschaftlichen Reichtum を、示している。未開人のような単純な商品所有者にとって、西ヨーロッパの農民にとってすら、価値は価値形態から離しては考えられない。したがって、金や銀の退蔵の増加が、価値増加と考えられている。もちろん、貨幣の価値は、貨幣自身の価値変動の結果であれ、商品の価値変動の結果であれ、変化する。しかしながら、このことは、一方においては200オンスの金が、依然として100オンスより多くの価値を含んでいること、300オンスが、二200オンスより多いということを妨げないし、また他方、この物の金属としての自然形態が、すべての商品の一般的な等価形態であること、一切の人間労働の直接に社会的な化身/受肉 die unmittelbar gesellschaftliche Inkarnation aller menschlichen Arbeit であることを妨げない。貨幣退蔵の衝動は、その本性上とめどがない。質的に、またはその形態上、貨幣は無制限である。すなわち、素材的富の一般的な代表者である。というのは、あらゆる商品にたいして直接に転化しうるからである。・・・(岩波文庫p.232)

 第2篇 貨幣の資本への転化
  〔流通形式-商品と貨幣/二つの同じ物的要素・sachlichen Elemente
 第4章 貨幣の資本への転化/
変身・変態 Verwandlung von Geld in Kapita

  
第1節 資本の一般定式 〔一般的な形式:Die allgemeine Formel 〕
  〔商品流通-資本の最初の現象形態:
  ① 貨幣の価値は、社会的な富-直接に社会的な化身/受肉 die unmittelbar gesellschaftliche Inkarnation
  
 経済的な諸形態/諸形式 die ökonomischen Formen の考察


1.  商品流通は資本の出発点である。商品生産と、発達した商品流通である商業は、資本の成立する歴史的前提をなしている。世界商業と世界市場は、16世紀において、資本の近代的生活史/近代的生命誌 die moderne Lebensgeschichte des Kapitalsl を開始する。
 
商品流通の素材的内容、すなわち各種使用価値の交換は、これを見ないことにして、この過程がつくり出す経済的な諸形態/諸形式 die ökonomischen Formen のみを考察するならば、われわれはその最後の生産物として貨幣を見出す。商品流通のこの最後の生産物は、資本の最初の現象形態/形式・G―W―Gである。

   〔 流通形式 W―G―W、G―W―G 〕
2. 商品流通の直接の形態/形式は W―G―W である。すなわち、商品の貨幣への転化および貨幣の商品への再転化であり、買うために売ることである。しかしながら、この形態/形式とともに、われわれには、第二の特殊なちがった形態/形式がある。すなわち G―W―G という形態/形式であり、貨幣の商品への転化および商品の貨幣への再転化。

    〔流通形式-商品と貨幣/二つの同じ物的要素
3.  両循環は、同じ二つの相対せる段階、W―Gすなわち売りと、G―Wすなわち買いとに分かれる。両段階のおのおのにおいて、二つの同じ物的要素 dieselben zwei sachlichen Elemente が相対している。商品と貨幣である。――そして二人の人物が、同一の経済的扮装をもって相対している。買い手と売り手である。両循環のおのおのは、同一の相対立している段階の統一であって、両者ともに、この統一が、三人の契約者の出現によって、媒介されている。そのうちの一人は売るだけであり、他の一人は買うだけであり、しかして第三人目は交互に買ったり、売ったりする。(岩波文庫p.258)
   
    〔 資本としての貨幣の流通・G―W―G
4.  だが、二つの循環 W―G―W と G―W―G を最初から分かつものは、同じく対立せる流通段階の逆の順序である。単純なる商品流通は、売りをもって始まり、買いをもって終わる。資本としての貨幣の流通は、買いをもって始まり、売りをもって終わる。前者では商品が、後者では貨幣が、運動の出発点と終局点をなしている。第一の形態では貨幣が、第二の形態では逆に商品が、全体の進行を媒介している。

   〔 貨幣の前貸し・G―W―G 〕
5.  W―G―Wなる流通においては、貨幣は結局、商品に転化され、この商品は使用価値として用いられる。かくて、貨幣は最後的に支出される。これに反して、逆の形態 G―W―G においては、買い手が貨幣を支出するのは、売り手として貨幣を収得するためである。彼は、商品の買いに際しては、貨幣を流通に投ずる。これを、再び同じ商品の売りによって流通から引き出すためである。彼は、貨幣をただ、再び手に入れるという狡猾な意図をもってのみ、手離すのである。したがって、貨幣は、ただ前貸しされるだけである。(岩波文庫p.259)

  ・・・以上・・・